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山のおもしろ歴史いろいろ
CLIMBING9)南アルプス南部大半の所有者(大倉喜八郎)の実話の物語に迫る
S1
私が南アルプスを登りはじめておおむね50年、その間、大倉財閥(東海パルプ)のバスに何回御世話になったでしょうか。南アルプス登山者の為に運行しているこのマイクロバスは、畑薙第一ダム⇔椹島⇔二軒小屋作業所までを走らせている無料バスなのです。(但し南アルプスのいずれかの小屋を利用する必要があります)
さて、この広大な南アルプス南部の大半を所有しているのが東海パルプ(旧大倉財閥)なのです。
一代で築き上げた財閥の主は大倉喜八郎。
あまり世に知られていない(実績の割には)人物がどのようにして一代で大財閥を築き上げたのか。NHK大河ドラマ(渋沢栄一)と大きく関係したその人物に思いをはせます。ちなみに南アルプス南部の広大な山林は徳川幕府の家臣であった酒井家より買い取ったものだそうです。
天保八年(1837年)越後国、新発田の名主大倉千之助の三男として、生を受けます。
生家は代々質屋を営んでいたといいますが、飢饉の時には新発田藩の多くの民に私財を投げたといいます。後に両親を亡くした後に、法要を済ましての江戸への出達でした。時は安政元年(1854年)「江戸で一旗上げるまでは、二度と故郷の土は踏むまい」と心に誓い、江戸に向かった喜八郎少年。知人を頼り、塩物屋に入店後に鰹節屋に入り2年数ヶ月の後に独立19才の時でありました。下谷上野町摩利支天横町(今のアメ横)に2畳間口の家を借り、乾物店を開業。奉公で貯めた資金25両の門出でありました。
その後、鉄砲屋、洋服屋、建設請負、貿易商と商売を広めていきます。
のちに三井・三菱と並ぶまでには、奉公の時代は朝6時までには閉まっている店先に立ち掃き掃除、睡眠時間4時間だったといいます。自立してからは、大名からの鉄砲の急ぎ注文があれば夜を徹して東海道を駕籠を走らせ横浜に向かう。道中大井村の鈴ヶ森獄門場には、罪人たちのさらし首が晒されている。さらに鈴ヶ森辺りは盗賊が頻繁に出没する為、現金買の同業者は夜はまったく通過しません。そこに価値を見い出す喜八郎。同業者を制するには物騒な世の中でも必ず注文に答える。夜を徹して横浜まで来る鉄砲商人は喜八郎くらいなのだ。外国商館は朝9時に開く一番で乗り込み必要な数の鉄砲を押さえるのだ。「早起きは三文の得、他人と同じ事をやっていて金儲けなんか出来るか!」喜八郎の心情なのである。
鉄砲商人 大蔵喜八郎の名は、諸大名屋敷に広まるようになり、神田和泉橋通りに出店する頃には、伊藤博文・大久保利通はじめ官軍の重役達にも知れ渡り、同じくして渋沢栄一とも懇意になったのであります。
後に日本橋十軒店(現在の日本橋室町3丁目辺り)に出店する頃には、商売もさらに江戸屈指の大店(おおだな)となり、後に渋沢栄一と一緒に仕事をする頃には創立・創設した企業団体は数百団体に及んだとされます。一例を上げますと東京商法会議所、横浜銀行取引所、大阪紡績会社、東京瓦斯会社、帝国ホテル、帝国劇場さらには東京経済大学等、明治・大正期になると日本の主だった建築土木工営はほとんど引き受けたとされており、渋沢栄一と関係なく独自の創設には札幌大倉シャンツェ、八幡製鉄、ホテルオークラ、歌舞伎座、鹿鳴館、東京電燈会社さらには中国においては党派を越えて、孫文・袁世凱・蒋介石の要請により25社(団体)、朝鮮には京釜(キヨンプ)鉄道、京義(キヨンギ)鉄道等列挙すればするほど驚くばかりです。
戦後大倉財閥は解体されますが、中心的だった大倉土木は大成建設として再成されます。ちなみに大成の名は大倉喜八郎の戒名から2文字を取って名付けられております。
晩年、天皇陛下より授与された勲一等旭日大綬章は実業家として初めての快挙なのです。
「大倉喜八郎、赤石岳絶頂を極む九十翁頂上に立つ」
90才を過ぎた折100人以上の案内人と作業員手代を従え、駕籠に乗っての登頂だったそうです。その時数百発の花火が揚がり南アルプスの連山にこだましたそうです。その足跡は赤石岳の大倉尾根として今でも南アルプスの登山者を見守り続けております。
NHK大河ドラマ(渋沢栄一)の45分間の映像の中で時として流れるNHK交響楽団のテーマ曲は視聴者に勇気と感動を与える素晴らしいメロディーですが、私(南アルプス人)には、時代の変革に翻弄されながらも商人として、生き抜いた、大倉喜八郎の苦難と栄光の偉業を称えるように聞こえるのです。
※ 元は徳川幕府の所領とされる広大な南アルプス南部の山林(一万三千三百ヘクタール)の買い値は、当時の金で5万円だったそうです。三千メートル級の山々(赤石岳・間ノ岳・農鳥岳)などがそびえる深山幽谷の地なのであります。生涯を共にした渋沢栄一は「私達は趣味も性格も全く相反していたが、それでも気が合い、一度も喧嘩した事がない。商人の大倉さんは大官に対しても畏縮することなく、その押の強さは話し以上だ・・・・・・」と述懐しております。
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